YUYAMI号発進

第1話

ピピピピピピ…  ピピピピピピ…

チオのモバイルからコール音が聞こえる。

「あ、久しぶりにションから連絡がきた」

ピッ

「もしもし、うん、えっ!?言ってたやつ!?

本当!?うん、わかった」

アニンとマークがチオの動揺を気にする。

「ねえ、アラキが宇宙船完成させたって」

「まじかよ、いつかやると思ってたぜ」

アニンは破顔して言う。

マークは首を振る。冗談だろ。

3人はアラキとションのいるラボへ向かう。

煙突街の裏路地を通り抜け、低音がリズムよく響いてきた。

「よく来てくれた、早速だが見てほしい」

「YUYAMI号っていうんだよっ」

ラボの奥で宇宙船YUYAMI号が呼吸するかのように排気煙を出している。

「これ?え、これ?……本当に飛ぶの?」

笑うチオにションが首を傾げる

「チオどうしたの?機嫌良くない?」

アニンが代わりに答える

「あの日から元気なんだよ」

アラキが口を挟む

「そういえば持ってきてくれた?」

マークがアタッシュケースを開き甘い匂いが立ち込める。

「これはこれで嬉しいけど、反重力スピーカーだよ、動いたんでしょ?」

ションがすかさず釘を刺す

「分解しないでよ!あ、あたしルナシティでレコード買いたい!」

第2話

「見た目はこんなでもアラキの腕は確かだ、飛ぶんだろ?」

「飛びながら改造する!」

アラキがガラクタを船に積み込む。

チオが船から出てきて質問攻めだ。

「これって7人乗り?燃料は?奥にある…」

「こんばんはー」

「おっ、いたのかインシュン!」

「実はYUYAMI号が完成したのはインシュンのおかげだよ」

「そんなんじゃないですけど、とうとうですよ!抜け出しますよこの街から、脱獄みたいな気分ですよ!」

マークが言う、

「じゃあ今夜は地球で最後の晩餐といこうか」

やろう!賛成!楽器持っていこう!腹減った!

第3話

煙に包まれた地下のバーで汗と酒が飛び散る。

揺れる音楽に合わせて騒がしく声が響く。

「おい、お前今なんて言った?俺は耳がいいんだ、月って言ったよな?」

「お前に関係ないだろ」

マークがそっけなく答えた後にインシュンが続く

「もしかして、ダブルトリガーのヨウスケ?」

「そうだよ俺はヨウスケ、月に帰りたい!」

「知らねぇよ、これからいいところなんだ聴いてろ」

ステージではアニンとアラキがそれぞれ作り直した楽器を演奏している。

俺の話を聞いてくれ!そう言いながらチオが持っていたグラスを横取りして飲んでしまうヨウスケ。

「ちょっと、何なのあんた」

「俺も月に… 」

ヨウスケがチオと目を合わせた途端動きを止める。

「貴女は何者?歌は?歌わないの?」

「あたしはもう歌わないよ、歌えない」

「俺は貴女の歌が聴きた…」

ヨウスケの襟首が引かれる

「おい、お前さっき勝手に俺の飯に手付けた奴だろ?俺の仲間に何なんだ」

アニンがステージから戻ってきた

マークがアニンに教えるように言う

「昔一緒に仕事したことあるよ、悪いやつではないけどな」

「マーク、あの時は助かった!頼む!俺も船に乗せてくれ!あんたらの飯食って悪かった!」

「俺の船じゃねぇ、帰る理由は?」

「まあいいだろう、理由はしまっとけ、明日出発する」

「俺もいいと思う、歌は多い方がいい」

「アニンとアラキがそう言うなら。良かったなダブルトリガー」

「本当か!?ありがとう!!きっと俺は役に立つぜ!さあ、乾杯しよう!」

「調子がいいのね、よろしくヨウスケ」

第4話

「今日も煙ってて空は見えないようです」

「大丈夫だインシュン、俺たちは見失わない」

古びた作業場で浪漫が詰め込まれた。

長年に渡る研究と開発、実験を止めることはなかった。

YUYAMI号が唸り出す、頼りない船でも皆の目は輝いている。

「みんな乗り込んだ?忘れ物はない?」

ションとチオの会話だ。

「結局燃料って何だっけ?」

アラキが答える。

「燃料では限りあるからね積んでないよ」

「どういうこと?まもなく発進だよね?」

「エネルギー源は音だよ。YUYAMI号はみんなで歌って飛ぶんだ。」

一同ビックリして顔を合わせる。

まじかよ!ヒューー!ご機嫌だぜ!タリラリラン!

足踏みがはじまる、手拍子がはじまる、

音で一体となった船内に声が響く。

「-今こそ我等の時がきた-

-漕ぎ出す船ぞ乗り込みな-」

YUYAMI号点火!発進!

震える船体は煙を噴き出し動きはじめる。

「動く!動いてる!浮いてる!」

「一気に大気圏を抜ける!声上げろ!」

小さな煙突を超え、大きな煙突を超え、船は煙を突き抜けた。

「すげえ!下見てみろよ!俺たち煙突より高いぜ!」

「空って、青い… 夕陽がこんなにきれい…」

「いけーーー!」

「このままー!」

「MOONSHOT!」

…プスン、…プスン

…プスン、…プスン

「出力低下!マシントラブル!」

…プス、…プス

「まずい!落ちる!」

「落ちる!?えっ!?落ちてる!」

「うぉーーっ!」

「ダメだーっ!」

「死ーー!死ーーぬーー!」

「When you tell me that you’ll be goin’ back on the road again」

「チオ!」

「Lights in my eyes tell me that you’re the man someday I’ll be marryin’」

「チオが!」

「すげえ歌だ!これなら!」

「エネルギー増幅!出力レベル最大!」

「高度上昇!高度上昇!」

上部へスクロール